媒介契約後の業務と専任の宅建士:宅建業法でつまずきやすい2問【令和8年度本試験 問29・問33】

公開: 2026-10-25 ・ 宅建BOOST 編集部

令和8年度本試験の宅建業法では、問29(媒介契約を結んだあとに業者が行う業務)と、問33(専任の宅地建物取引士)が、会員の正答率の低い問題でした。宅建BOOSTで自己採点した会員11名のうち、どちらの問題も、正解したのは1名(9%)にとどまりました。

問29では、10名が「三つ」を選びました。問33では、選ばれた番号が「一つ」4名、「二つ」5名、「三つ」1名、「なし」1名と分かれました。宅建業法の会員の分野別正答率は45%で、権利関係(36%)や法令上の制限(39%)を上回っていましたが、この2問は大きく外れた形です。ここでは、2問の論点を順に整理します。条文は令和8年4月1日現在のものです。

■ 問29の論点 媒介契約を結んだあとに、業者が何をするか

問29は、売却の依頼を受けた業者が、媒介契約を結んだあとに依頼者に対して行う業務について、正しいものの数を答える問題でした。論点は大きく3つあります。

まず、買受けの申込みがあったときの報告です。媒介契約を締結した業者は、その目的物である宅地または建物の売買や交換の申込みがあったときは、遅滞なく、その旨を依頼者に報告しなければなりません(宅地建物取引業法第34条の2第8項)。この規定は、専任媒介契約に限りません。一般媒介契約でも、報告が必要です。依頼者から状況の報告を求められたかどうかは、関係ありません。

混同しやすいのが、第9項の、業務の処理状況の報告です。こちらは専任媒介契約に限った規定で、2週間に1回以上(専属専任媒介契約では1週間に1回以上)の報告が必要です。第8項と第9項で、報告が必要な契約の種類が違う点を、区別して覚えておきましょう。

次に、専任媒介契約の場合の、指定流通機構への登録と、登録を証する書面です。専任媒介契約を締結した業者は、国土交通省令で定める期間内に、物件の情報を指定流通機構に登録しなければなりません(第34条の2第5項)。登録をした業者は、登録を証する書面を、遅滞なく依頼者に引き渡さなければなりません(同条第6項)。条文は「遅滞なく」と定めているだけで、依頼者の請求を条件にはしていません。

最後に、媒介契約の書面を、電磁的方法で提供する場合の承諾です。媒介契約を締結したときは、業者は遅滞なく、法定の事項を記載した書面を作成し、記名押印して、依頼者に交付しなければなりません(第34条の2第1項)。この書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、依頼者の承諾を得て、電磁的方法で提供することもできます(同条第11項)。

この承諾の取り方は、宅地建物取引業法施行令第2条の6に定められています。業者は、あらかじめ、使用する電磁的方法の種類と内容を依頼者に示したうえで、依頼者から、書面または電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法(国土交通省令で定めるもの)で、承諾を得なければなりません。承諾を得るという点は同じでも、言葉で了解をもらうだけで済ませてよい、という扱いではありません。

この問題では、3つの記述のうち、正しいものが2つで、電磁的方法の承諾の取り方についての記述が誤りでした。会員の10名が「三つ」を選んだことは、承諾の取り方についての記述も正しいと判断した人が多かった、という意味になります。

■ 問33の論点 専任の宅建士とは

問33は、専任の宅地建物取引士に関する4つの記述について、正しいものの数を答える問題でした。正解は「なし」、つまりすべて誤りでした。

宅建業者は、事務所その他国土交通省令で定める場所ごとに、国土交通省令で定める数の、成年者である専任の宅地建物取引士を置かなければなりません(宅地建物取引業法第31条の3第1項)。ここから、次の点が整理できます。

・重要事項説明書と37条書面の記名

重要事項説明書への記名は、宅地建物取引士が行います(第35条第5項)。37条書面についても、業者は宅地建物取引士をして記名させなければなりません(第37条第3項)。どちらも、条文が求めているのは「宅地建物取引士」であって、「専任の」とは書かれていません。記名は専任の宅建士に限られる、という扱いではありません。

・置く人数

省令が定める数は、事務所では、業務に従事する者の数に対して、宅建士の数の割合が5分の1以上となる数です(宅地建物取引業法施行規則第15条の5の3)。そして、第31条の3第1項が置くよう求めているのは「専任の」宅建士です。5名に1名という数だけを覚えて、専任でなくてもよい、と考えるのは誤りです。

・専任の意味

条文は「専任」の意味を定義していません。国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」では、原則として、宅建業を営む事務所に常勤(業者の通常の勤務時間を勤務すること。ITの活用などで適切な業務ができる体制を確保したうえで、事務所以外で通常の勤務時間を勤務する場合を含む)して、専らその事務所の宅建業の業務に従事する状態をいう、とされています。通常の勤務時間を勤務しない状態では、専任とはいえません。また、同じ考え方は、ある事務所で一時的に業務がない間に同じ業者の他の事務所の業務に従事することは差し支えないとしつつ、その場合でも、他の事務所の専任の宅建士を兼ねられるわけではない、と注意を促しています。

4つの記述は、いずれもこうした条文や考え方の限定を外した内容で、すべて誤りでした。

■ 2問に共通する間違えやすさ

2問とも、「いくつあるか」を答える個数問題でした。1つの記述を取りこぼすと、全体の答えが変わる形式です。もう1つ、共通するのは、似た言葉の使い分けを問われている点です。電磁的方法には定められた方法での「承諾」が必要、専任媒介の報告と一般媒介の報告は別、専任の宅建士が必要な場面と、宅建士であればよい場面は別、といった具合です。

正解の番号は各校の解答速報で確認したもので、公式の正解は令和8年11月25日の合格発表で確定します。

■ 学習のコツ

宅建業法は、条文の文言どおりに問われる問題が多い分野です。「遅滞なく」「専任の」「宅地建物取引士の」といった限定の言葉や、条文に書かれていない条件を、飛ばさずに読む練習が役に立ちます。誰が、どの契約の場合に、何をするのか。この3点を、表やカードにして整理すると、個数問題でも判断が速くなります。

宅建BOOSTでは、令和8年度本試験の論点をもとにしたオリジナル問題で解き直せる「REVENGE」機能を、令和9年度版で提供する予定です。

よくある質問

専任媒介契約の登録を証する書面は、依頼者から求められなくても渡す必要がありますか。

必要です。宅地建物取引業法第34条の2第6項は、登録をした業者は、登録を証する書面を遅滞なく依頼者に引き渡さなければならないと定めています。依頼者の請求を要件とする書き方にはなっていません。

重要事項説明書に記名できるのは、専任の宅建士だけですか。

いいえ。宅地建物取引業法第35条第5項は、宅地建物取引士が記名することを求めており、専任であることは求めていません。37条書面の記名(第37条第3項)も同様です。

買受けの申込みがあったときの報告は、一般媒介契約でも必要ですか。

必要です。宅地建物取引業法第34条の2第8項は、媒介契約を締結した業者に、申込みがあったときの遅滞ない報告を求めており、契約の種類で区別していません。業務処理状況の定期報告(第9項)は専任媒介契約に限られます。

出典・参考