建築基準法の「原則と例外」を整理する:仮使用・非常用照明・勧告【令和8年度本試験 問17】

公開: 2026-10-25 ・ 宅建BOOST 編集部

令和8年度本試験の問17は、建築基準法に関する4つの記述から、誤っているものを選ぶ問題でした。宅建BOOSTで自己採点した会員11名のうち、正解した人は0名(0%)でした。

会員が選んだのは、検査済証の前の仮使用の記述(7名)と、共同住宅の非常用の照明装置の記述(4名)でしたが、この2つは、どちらも正しい記述でした。つまり、多くの会員が、正しい記述を誤りだと判断したことになります。「例外の規定を知らなかった」「適用除外の範囲があいまいだった」といった理由が考えられます(これは宅建BOOSTの推測です)。この記事では、問われた4つの論点を、条文に沿って整理します。条文は令和8年4月1日現在のものです。

■ 論点A 老朽化した建築物に、特定行政庁は勧告できるか

正解となった、誤りの記述がこの論点です。特定行政庁が、劣化の進んだ建築物の所有者などに、除却や修繕などの措置を勧告できるとする規定は、建築基準法第10条第1項にあります。ただし、その対象には条文上の限定があります。

勧告の対象は、第6条第1項第1号に掲げる建築物(特殊建築物で、その用途に使う部分の床面積の合計が200平方メートルを超えるもの)と、その他政令で定める建築物(建築基準法施行令第14条の2)の、敷地、構造、建築設備です。しかも、いずれも、第3条第2項の規定によって現行の規定の適用を受けない、いわゆる既存不適格のものに限られます。そのうえで、損傷や腐食などの劣化が進み、放置すれば著しく保安上危険となるなどのおそれがあると認める場合に、相当の猶予期限を付けて勧告ができます。

一般の戸建て住宅は、第6条第1項第1号の特殊建築物にも、施行令第14条の2が定める建築物(一定規模の特殊建築物や、階数3以上の事務所など)にも当たりません。条文が定める対象の枠に入っていない建築物にもこの勧告が使えるかのように述べると、誤りになります。

■ 論点B 非常用の照明装置は、共同住宅の住戸にも必要か

非常用の照明装置は、一定の特殊建築物の居室や、そこから地上に通ずる廊下・階段などに設けなければなりません(建築基準法施行令第126条の4)。共同住宅も、この対象となる特殊建築物の1つです。

ただし、この規定には適用を除く場合があり、一戸建ての住宅や、長屋または共同住宅の住戸は、設置の対象から外されています(同条ただし書第1号)。ここで注意したいのは、除外されるのが「住戸」であることです。共同住宅でも、住戸から地上に通ずる廊下や階段といった共用部分は、条文の書き方からすると、設置の対象となり得る部分です。「共同住宅だから不要」「共同住宅だから必要」と大づかみに覚えず、「住戸は除く」と、範囲まで区切って覚えておきましょう。

■ 論点C 検査済証をもらう前に、建物を使えるか

一定の建築物を新築する場合などには、建築主は、完了検査を受けて検査済証の交付を受けた後でなければ、その建築物を使用し、または使用させてはならない、とされています(建築基準法第7条の6第1項本文)。

ただし、次のいずれかに当たる場合は、検査済証の交付を受ける前でも、仮に使用し、または使用させることができます(同項ただし書)。

・特定行政庁が、安全上、防火上、避難上支障がないと認めたとき

・建築主事等または指定を受けた者が、安全上、防火上、避難上支障がないものとして国土交通大臣が定める基準に適合していることを認めたとき

・完了検査の申請が受理された日(指定を受けた者が検査を引き受けた場合は、所定の日)から7日を経過したとき

「検査済証の前は使えない」という原則だけを覚えていると、ただし書の例外を知らずに、正しい記述を誤りだと判断してしまいます。原則とただし書は、必ずセットで覚えておきましょう。

■ 論点D 条例で、法律より厳しい制限を付け加えられるか

地方公共団体は、その地方の気候や風土の特殊性、または特殊建築物の用途や規模によって、建築基準法の規定やこれに基づく命令だけでは、建築物の安全、防火、衛生の目的を十分に達しにくいと認める場合には、条例で、建築物の敷地、構造、建築設備に関して、安全上、防火上、衛生上必要な制限を付け加えることができます(建築基準法第40条)。

全国一律の基準に、地域の事情に応じた上乗せができる、という仕組みです。

■ 4つの論点を一言でまとめる

・老朽建築物への勧告 → 対象は、条文が定める建築物で、かつ既存不適格のものに限られる

・非常用の照明装置 → 共同住宅の住戸は適用除外。共用部分は別に考える

・検査済証前の使用 → 原則は使用禁止。ただし、特定行政庁の認定など3つの例外がある

・条例による制限の付加 → 気候・風土の特殊性などを理由に、地方公共団体が条例で上乗せできる

令和8年度本試験の問17では、勧告の対象の範囲を誤った記述が、正解の誤りでした。正解の番号は各校の解答速報で確認したもので、公式の正解は令和8年11月25日の合格発表で確定します。

■ 正しい記述を、誤りだと思わないために

「誤っているものはどれか」という問題では、正しい記述を誤りと思い込んでしまうと、その時点で正解から遠ざかります。そこで有効なのが、規定を覚えるときに、原則だけでなく、ただし書、適用除外、対象の範囲を、同じ画面で確認する習慣です。

建築基準法は条文が多く、細部まで覚えようとすると負担が大きい法律です。まずは「原則」「例外」「誰が・何を対象にするか」の3点に絞って整理し、数字の細部は繰り返し問題で確かめていく流れが、取り組みやすい進め方です。

宅建BOOSTでは、令和8年度本試験の論点をもとにしたオリジナル問題で解き直せる「REVENGE」機能を、令和9年度版で提供する予定です。

よくある質問

検査済証の交付を受ける前でも、建築物を使用できる場合はありますか。

あります。建築基準法第7条の6第1項ただし書により、特定行政庁が安全上、防火上、避難上支障がないと認めたときなど、いくつかの場合には、検査済証の交付前でも仮に使用できます。

共同住宅には、非常用の照明装置が一切いらないのですか。

いいえ。建築基準法施行令第126条の4ただし書で適用が除かれるのは、長屋または共同住宅の住戸などです。住戸から地上に通ずる廊下や階段などの共用部分は、条文の書き方からすると設置の対象となり得ます。

出典・参考