借地借家法とは?借地権・借家権の存続期間と更新・定期契約の違い
借地借家法の借地権と借家権は何が違う?
借地権は建物を所有するために他人の土地を借りる権利、借家権は他人の建物を借りる権利です。どちらも借地借家法が適用されますが、期間の数字も更新のしかたも別に定められています。
| 借地権(第2章) | 借家権(第3章) | |
|---|---|---|
| 対象 | 建物の所有を目的とする地上権・土地の賃借権(第2条第1号) | 建物の賃貸借 |
| 最初の期間 | 30年(これより長く定めるのは可、短く定めても30年) | 決まりなし。ただし1年未満は「期間の定めなし」とみなす |
| 更新後の期間 | 1回目は20年、2回目以降は10年 | 従前と同一の条件。ただし期間の定めはなしになる |
| 第三者に主張する方法 | 借地上の建物の登記(第10条) | 建物の引渡し(第31条) |
| 更新がない型 | 定期借地権など3種類(第22条〜第24条) | 定期建物賃貸借(第38条) |
| 借主に不利な特約 | 無効(第9条・第16条など) | 無効(第30条) |
| 適用されない場合 | 一時使用目的が明らかなとき(第25条) | 一時使用目的が明らかなとき(第40条) |
借地権の存続期間は何年?
最初は30年です。契約でこれより長く定めたときはその期間になります(第3条)。30年より短い期間を定めても、その部分は借地権者に不利な特約として無効になり、30年になります(第9条)。
| 何回目か | 存続期間 | 根拠 |
|---|---|---|
| 当初 | 30年(契約でこれより長い期間を定めたときはその期間) | 第3条 |
| 1回目の更新 | 20年(契約でこれより長い期間を定めたときはその期間) | 第4条 |
| 2回目以降の更新 | 10年(契約でこれより長い期間を定めたときはその期間) | 第4条 |
「30年・20年・10年」は下限です。当事者が長く定めることはできますが、短くはできません。
借地契約はどうやって更新される?
当事者が合意すれば更新されます。合意がなくても、次の2つのどちらかに当たると、従前の契約と同一の条件で更新されたものとみなされます(法定更新)。ただし、どちらも「建物がある場合に限る」という条件がつきます。
| 型 | 条件 | 根拠 |
|---|---|---|
| 更新請求 | 存続期間が満了する場合に、借地権者が契約の更新を請求したとき | 第5条第1項 |
| 使用継続 | 存続期間が満了した後、借地権者が土地の使用を継続するとき | 第5条第2項 |
いずれも、借地権設定者(地主)が遅滞なく異議を述べたときは更新されません(第5条第1項ただし書)。そしてこの異議は、正当の事由があると認められる場合でなければ述べることができません(第6条)。
正当事由の判断材料は条文に列挙されています。①当事者双方が土地の使用を必要とする事情、②借地に関する従前の経過、③土地の利用状況、④地主が明渡しの条件として、または明渡しと引換えに財産上の給付(立退料など)を申し出た場合のその申出、です。①が中心で、④は補強材料として考慮されます。
更新料の支払義務を定めた条文はありません。契約で定めた場合や地域の慣行がある場合に問題になるだけです。
建物が滅失して建て直したらどうなる?
存続期間が満了する前に建物が滅失し、借地権者が残存期間を超えて存続する建物を築造したときは、借地権設定者の承諾がある場合に限り、借地権は承諾があった日または建物が築造された日のいずれか早い日から20年間存続します(第7条第1項)。
承諾は、借地権者が「残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造する」と通知し、地主がその通知を受けた後2か月以内に異議を述べなかったときにもあったものとみなされます(第7条第2項)。ただしこのみなし承諾は、契約の更新後に通知があった場合には働きません(同項ただし書)。
借地権は登記がなくても主張できる?
できます。借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、第三者に対抗できます(第10条第1項)。対抗力の根拠になるのは土地の賃借権の登記ではなく、建物の登記です。
建物が滅失した場合でも、①その建物を特定するために必要な事項、②滅失があった日、③建物を新たに築造する旨を、土地の上の見やすい場所に掲示すれば対抗力が続きます。ただし、滅失の日から2年を経過した後は、その前に建物を新たに築造して登記した場合に限られます(第10条第2項)。
更新がないとき、建物を買い取ってもらえる?
存続期間が満了して契約の更新がないときは、借地権者は借地権設定者に対し、建物その他権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求できます(第13条第1項・建物買取請求権)。
建物の賃貸借の側では、賃貸人の同意を得て付加した畳・建具その他の造作について、期間の満了または解約の申入れによって終了するときに、時価での買取りを請求できます(第33条第1項・造作買取請求権)。ただし造作買取請求権は第37条の強行規定の対象から外れており、特約で排除できます。建物買取請求権(第13条)を排除する特約は、借地権者に不利なものとして無効です(第16条)。
定期借地権は何種類ある?
更新がない借地権は3種類です。期間・用途・書面の要件の3点で区別します。
| 一般定期借地権(第22条) | 事業用定期借地権(第23条) | 建物譲渡特約付借地権(第24条) | |
|---|---|---|---|
| 存続期間 | 50年以上 | 第1項:30年以上50年未満/第2項:10年以上30年未満 | 30年以上を経過した日に建物を譲渡する定め |
| 建物の用途 | 制限なし(居住用も可) | 専ら事業の用に供する建物(居住用を除く) | 制限なし |
| 書面の要件 | 公正証書による等、書面(電磁的記録も書面とみなす・第22条第2項) | 公正証書に限る(第23条第3項) | 書面は不要 |
| 効果 | 更新なし・建物築造による延長なし・建物買取請求なし | 同じ(第2項は第3条〜第8条・第13条・第18条を適用しない) | 建物を地主に相当の対価で譲渡して借地権を消滅させる |
第22条は「公正証書による等書面によってしなければならない」なので、公正証書でなくても書面であればよいという点に注意してください。公正証書に限られるのは第23条(事業用)だけです。第24条には書面の要件がありません。書面の要件はこの3つで扱いが分かれるので、条文ごとに押さえてください。
建物譲渡特約付借地権で借地権が消滅した後、その借地権者や建物の賃借人が建物の使用を継続していて請求をしたときは、請求の時に期間の定めのない建物賃貸借がされたものとみなされます(第24条第2項)。ただし例外が1つあります。借地権者が請求した場合で、借地権の残存期間があるときは、期間の定めなしではなくその残存期間を存続期間とする賃貸借になります(同項かっこ書き)。建物の賃借人が請求した場合は、残存期間があっても常に期間の定めなしです。
借家権の期間と更新はどうなる?
建物の賃貸借には最短期間の定めがありませんが、1年未満の期間を定めた建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなされます(第29条第1項)。また、賃貸借の存続期間の上限を50年とする民法第604条は建物の賃貸借には適用されないため、50年を超える期間も定められます(第29条第2項)。民法第604条の上限は改正民法(2020年4月1日施行)で20年から50年に変わりました。古い教材では20年のままになっていることがあります。
| 場面 | ルール | 根拠 |
|---|---|---|
| 期間を1年未満と定めた | 期間の定めがない建物賃貸借とみなす | 第29条第1項 |
| 期間の定めがある | 満了の1年前から6か月前までに当事者が更新しない旨(または条件を変更しなければ更新しない旨)の通知をしないと、従前と同一の条件で更新したものとみなす。ただし期間は定めがないものとなる | 第26条第1項 |
| 通知をしたが借主が使用を継続 | 賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも更新とみなす | 第26条第2項 |
| 期間の定めがない場合の解約 | 賃貸人が解約を申し入れると、申入れの日から6か月の経過で終了 | 第27条第1項 |
| 賃貸人からの更新拒絶・解約申入れ | 正当の事由が必要 | 第28条 |
更新しない旨の通知は、賃貸人からでも賃借人からでもできます(条文は「当事者が」)。一方で、正当事由が必要なのは賃貸人からの通知・解約申入れだけです(第28条)。ここを入れ替えた出題が定番です。
法定更新されたときは期間の定めがない賃貸借になるので、その後に賃貸人が終了させるには第27条の解約申入れ(6か月)と第28条の正当事由が必要になります。
借家権は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときに、その後その建物について物権を取得した者に対して効力を生じます(第31条)。借地権の対抗力が「建物の登記」なのに対し、借家権は「引渡し」です。
定期建物賃貸借(定期借家)の要件は?
期間の定めがある建物の賃貸借で、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、更新がないこととする旨を定められます(第38条第1項)。この場合、第29条第1項(1年未満は期間の定めなしとみなす)は適用されません。つまり、定期借家では期間を1年未満にできます。
| 要件・ルール | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 契約の方式 | 公正証書による等書面(公正証書に限らない)。電磁的記録も書面とみなす | 第38条第1項・第2項 |
| 期間 | 下限も上限もなし。1年未満も可(第29条第1項を適用しない) | 第38条第1項 |
| 事前説明 | 賃貸人はあらかじめ、更新がなく期間満了で終了する旨を記載した契約書とは別の書面を交付して説明する(賃借人の承諾を得て電磁的方法でも可) | 第38条第3項・第4項 |
| 説明しなかったとき | 更新がない旨の定めが無効(=普通借家になる) | 第38条第5項 |
| 終了の通知 | 期間が1年以上のときは、満了の1年前から6か月前までに終了する旨を通知しないと終了を賃借人に対抗できない。通知期間を過ぎた後に通知したときは、その日から6か月の経過後は対抗できる | 第38条第6項 |
| 賃借人からの中途解約 | 居住用で床面積200㎡未満の建物で、転勤・療養・親族の介護その他やむを得ない事情により生活の本拠として使用が困難になったときは解約を申し入れられる。申入れの日から1か月で終了 | 第38条第7項 |
| 賃借人に不利な特約 | 第6項・第7項に反する特約で賃借人に不利なものは無効 | 第38条第8項 |
| 借賃の改定の特約 | 特約があるときは借賃増減請求(第32条)は適用しない | 第38条第9項 |
事前説明の書面は、契約書そのものとは別に必要です。契約書に「更新がない」と書いてあるだけでは第38条第3項の説明をしたことになりません。
数字でまとめると?
| 数字 | 何の数字か | 根拠 |
|---|---|---|
| 30年 | 借地権の当初の存続期間 | 第3条 |
| 20年 | 1回目の更新後の存続期間/建物の再築で承諾があったときの存続期間 | 第4条・第7条第1項 |
| 10年 | 2回目以降の更新後の存続期間 | 第4条 |
| 2か月 | 再築の通知に対して地主が異議を述べないと承諾とみなされる期間 | 第7条第2項 |
| 2年 | 借地上の建物が滅失した後、掲示で対抗力を維持できる期間 | 第10条第2項 |
| 50年以上 | 一般定期借地権の存続期間 | 第22条 |
| 30年以上50年未満/10年以上30年未満 | 事業用定期借地権の存続期間 | 第23条第1項・第2項 |
| 30年以上 | 建物譲渡特約付借地権で建物を譲渡する時期 | 第24条 |
| 1年未満 | 建物賃貸借で定めると「期間の定めなし」とみなされる期間(定期借家は除く) | 第29条第1項・第38条第1項 |
| 1年前から6か月前まで | 借家の更新拒絶の通知期間/定期借家の終了通知の通知期間 | 第26条第1項・第38条第6項 |
| 6か月 | 期間の定めのない借家で賃貸人が解約を申し入れてから終了するまで | 第27条第1項 |
| 200㎡未満・1か月 | 定期借家で賃借人が中途解約できる床面積の条件と、終了までの期間 | 第38条第7項 |
試験でよく狙われるポイントは?
- 「借地権の存続期間を20年と定めた契約は有効」→ 誤り。30年より短い定めは無効で、30年になります(第3条・第9条)
- 「借地契約の更新後の期間は、1回目も2回目も20年」→ 誤り。1回目が20年、2回目以降は10年です(第4条)
- 「建物がなくても、使用を継続していれば借地契約は法定更新される」→ 誤り。法定更新は建物がある場合に限られます(第5条)
- 「借地権を第三者に対抗するには、土地の賃借権の登記が必要」→ 誤り。借地上の建物の登記で足ります(第10条第1項)
- 「事業用定期借地権も、書面であれば公正証書でなくてよい」→ 誤り。第23条は公正証書に限られます(同条第3項)
- 「一般定期借地権(第22条)は公正証書でなければならない」→ 誤り。「公正証書による等書面」です
- 「建物譲渡特約付借地権は書面で契約しなければならない」→ 誤り。第24条には書面の要件がありません
- 「定期借家契約は期間を1年以上としなければならない」→ 誤り。第29条第1項が適用されないので1年未満も可です(第38条第1項)
- 「定期借家では、契約書に更新がない旨を明記すれば事前の説明書面は不要」→ 誤り。契約書とは別の書面の交付と説明が必要で、しなければ更新がない旨の定めが無効になります(第38条第3項・第5項)
- 「借家の更新拒絶の通知は賃貸人しかできない」→ 誤り。当事者のどちらからでもできます。正当事由が必要なのは賃貸人側だけです(第26条第1項・第28条)
- 「期間の定めのない借家は、賃貸人の解約申入れから3か月で終了する」→ 誤り。6か月です(第27条第1項)
- 「造作買取請求権を排除する特約は無効」→ 誤り。特約で排除できます。排除できないのは借地の建物買取請求権(第13条)です(第16条)
- 「一時使用目的であることが明らかな借地・借家にも借地借家法が適用される」→ 誤り。借地は第25条、借家は第40条で適用されません
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よくある質問
借地権の存続期間を20年と定めた契約は有効ですか?
無効です。借地権の存続期間は30年とされており(借地借家法第3条)、これより短い期間を定める特約は借地権者に不利なものとして無効になります(同法第9条)。その結果、存続期間は30年になります。30年より長い期間を定めることは可能で、その場合は定めた期間が存続期間になります。
定期借家契約は期間を1年以上にしなければなりませんか?
いいえ。定期建物賃貸借(定期借家)では1年未満の期間も定められます。通常の建物賃貸借では1年未満の期間を定めると「期間の定めがない賃貸借」とみなされますが(借地借家法第29条第1項)、定期借家ではこの規定が適用されないためです(同法第38条第1項)。ただし期間が1年以上の場合は、満了の1年前から6か月前までに終了する旨の通知が必要です(同条第6項)。
定期借地権で公正証書が必要なのはどれですか?
事業用定期借地権(借地借家法第23条)だけです。同条第3項が「公正証書によってしなければならない」と定めています。一般定期借地権(第22条)は「公正証書による等書面」なので公正証書以外の書面でもよく、建物譲渡特約付借地権(第24条)には書面の要件がありません。